こんにちは。「motofrontier」の「マコト」です。
ダカール・ラリーのマシンをそのまま公道に持ってきたかのようなスタイリング、そして「Next Horizon is Yours」という冒険心を掻き立てるキャッチコピー。
ヤマハ・テネレ700(Ténéré 700)は、多くのアドベンチャーライダーにとって憧れの存在です。私自身、街中でテネレ700を見かけると、その圧倒的な存在感に思わず振り返ってしまいます。
しかし、いざ購入を具体的に検討し始めると、テネレ700を買って後悔するのではないかという懸念や、足つきが悪すぎて自分には無理かもしれない、あるいは長距離移動で疲れるのではないかといった不安要素が気になり、なかなか決断できないという方も多いはずです。
どれだけ見た目が好みでも、自分の体格や用途に合わなければ、バイクライフは苦痛なものになってしまいます。特にこのバイクは、一般的な「快適なツーリングバイク」とは一線を画す、非常に尖ったコンセプトで作られているため、ミスマッチが起きやすいのも事実です。
この記事では、テネレ700オーナーたちが実際に直面したリアルな悩みや、購入後に「こんなはずじゃなかった」と評価を下げてしまいがちなポイントを徹底的に深掘りします。
また、それらのデメリットをどのように克服すべきか、あるいはライバル車であるホンダ・トランザルプやスズキ・Vストローム800DEを選んだ方が幸せになれるのかについても、詳細に比較検証していきます。
あなたがテネレ700という相棒を選んで本当に後悔しないか、その最終確認としてこの記事をお役立てください。
あなたは今、こんなことで悩んでいませんか?
- ✅ 身長が170cm前後で、信号待ちのたびに立ちゴケの恐怖と戦う自信がない
- ✅ パンク修理が極めて難しいチューブタイヤ仕様であることが、購入の最大のネックになっている
- ✅ 最新の電子制御や快適装備が少ないのに、140万円を超える価格設定に納得がいっていない
- ✅ 高速道路を淡々と走るロングツーリングがメイン用途だが、疲労感が心配だ

もし一つでも当てはまったなら、この記事があなたの疑問をすべて解決します。
テネレ700を買って後悔する決定的な理由
「見た目が好きだから、多少のことは我慢できる」と思って購入に踏み切ったものの、納車初日の帰り道で早くも「やってしまったかもしれない」と冷や汗をかく。
テネレ700は、そんな事態が起こりうる数少ない現行車の一つです。ここでは、多くのユーザーが直面する「理想と現実のギャップ」について、忖度なしで解説します。
絶望的な足つきと身長による立ちゴケの恐怖
テネレ700を検討する上で避けて通れない最大の壁、そして購入後の後悔要因として最も多いのが、シート高875mmという容赦のないスペックです。
数字だけを見れば「オフロードバイクならそんなものだろう」と思うかもしれませんが、テネレ700の場合、その数値以上に体感的な足つきは厳しいものになります。
まず、このバイクは本格的なオフロード走行を想定しているため、最低地上高が240mmと非常に高く設定されています。それに伴い、エンジンの搭載位置や重心位置も高くなっており、車体が少しでも傾くと、ズシリと重い質量がライダーに襲いかかります。
身長170cm前半の一般的な日本人体型のライダーであれば、両足の踵が着くことはまずあり得ません。片足のつま先がツンツンに着く程度の、いわゆる「バレリーナ状態」を強いられることになります。

さらに厄介なのが、サスペンションの沈み込みです。オフロードバイクはライダーが跨るとサスペンションが沈んで足つきが良くなるものですが、テネレ700の純正スプリングは比較的高荷重設定であり、体重が軽めのライダーだとあまり沈み込みません。
加えて、シート幅もオフロードでの操作性を重視して設計されているとはいえ、長時間の快適性を確保するためにある程度の厚みと幅があるため、これが足を真っ直ぐ下ろすことを妨げ、股下の数値をさらに削り取っていきます。
この足つきの悪さがもたらすのは、単なる「不便」ではなく、「日常的な転倒リスクとの隣り合わせ」という精神的なプレッシャーです。
| 身長 | 足つき状況 | 停車時のリスク |
|---|---|---|
| 165cm以下 | 絶望的(片足のつま先すら怪しい) | 平坦地でも自力での支えは困難。縁石利用が必須レベル。 |
| 170cm前後 | つま先ツンツン(バレリーナ状態) | 轍や傾斜がある場所では立ちゴケリスク極大。お尻ずらし必須。 |
| 175cm前後 | 片足の母指球まで接地 | 油断しなければ支えられるが、強風時や疲労時は危険。 |
| 180cm以上 | 両足の裏が浮く程度〜踵接地 | ようやく安心して扱えるレベル。本来のターゲット層。 |
例えば、ツーリング先の絶景ポイントで写真を撮ろうとした際、路肩が砂利で少し傾斜していたとします。普通のバイクなら何気なく停められる場所でも、テネレ700の場合は「足を着く場所が窪んでいないか」「スタンドを出した側に傾斜していないか」を瞬時に判断しなければなりません。
判断を誤って足が空を切った瞬間、200kgを超える車体は重力に従って倒れます。一度傾き始めた重心の高いテネレを、つま先立ちの脚力だけで支えることは、人間の身体構造上ほぼ不可能です。
信号待ちのたびにお尻をずらして片足接地をする動作、渋滞時のストップ&ゴーでのふらつき、これらが積み重なると、楽しいはずのツーリングが「苦行」へと変わってしまいます。
「もっと気楽に乗れるバイクにすればよかった」と後悔するのは、まさにこの精神的な余裕のなさを自覚した時なのです。なお、重量級ADV全般に共通する「低速の怖さ/引き起こし問題」については、こちらの記事がかなり具体的で、感覚の補助線になります。
チューブレス非採用でパンク修理が困難な現実
現代のミドルクラス以上のアドベンチャーバイク(例:BMW F900GS、Triumph Tiger 900、Suzuki V-Strom 1050DEなど)は、スポークホイールでありながら「チューブレスタイヤ」を採用するのがスタンダードになっています。
しかし、テネレ700は頑なに一般的な「チューブタイヤ」を採用し続けています。これにはメーカーなりの合理的な理由があるのですが、一般ユーザーにとっては大きな「後悔ポイント」となり得ます。

ヤマハがチューブタイヤを採用する主な理由は、リムの強度確保と、激しいオフロード走行でリムが変形した場合のエア漏れリスク回避です。しかし、この「ガチ勢向け」の配慮が、一般的なツーリングライダーには仇となります。最大の問題は、パンク修理の難易度が桁違いに高いことです。
もしあなたがチューブレスタイヤのバイクに乗っていて釘を踏んだ場合、修理キットのプラグ(ゴム状の詰め物)を外からねじ込むだけで、早ければ5分程度で応急処置が完了し、そのまま走り出すことができます。ホイールを外す必要すらありません。
しかし、テネレ700でパンクした場合、作業工程は以下のようになります。
- センタースタンド(オプション装備)が無ければ、車体を持ち上げる手段を確保する(石や倒木を探すか、車体を倒す)。
- アクスルシャフトを緩め、重いホイールを車体から取り外す。
- タイヤレバー2〜3本を駆使して、硬いアドベンチャー用タイヤのビードを落とし、リムからタイヤを片側だけ(あるいは全部)剥がす。
- 中のチューブを引き出し、パッチを貼って穴を塞ぐか、予備のチューブに入れ替える。
- チューブを噛み込まないよう慎重にタイヤをリムに戻し、携帯ポンプで何百回もポンピングして空気を入れる。
- ホイールを車体に組み付け、チェーン調整を行う。
いかがでしょうか。雨の降る高速道路の路肩や、携帯電波の届かない真夏の林道で、この作業を一人で行う自信はありますか? 多くのライダーにとって、これは「不可能」に近いミッションです。
ロードサービスを呼ぶにしても、山奥であれば到着までに数時間を要しますし、最悪の場合はレッカー移動となり、その日のツーリングは終了となります。
「今どきのバイクで、なぜこんな苦労をしなければならないんだ」という不満は、実際にパンクを経験したオーナーほど強く感じています。日常のメンテナンスやツーリングのリスク管理において、チューブタイヤであることは、現代においては明確なデメリット(不便さ)として認識しておく必要があります。
高速道路での快適性が低いという評価の真相
「アドベンチャーバイク」という言葉からは、大陸横断もこなせるような快適なクルージング性能をイメージする方が多いでしょう。しかし、テネレ700を「快適なツアラー」だと思って購入すると、少し肩透かしを食らうかもしれません。むしろ、その乗り味は「カウルの付いた巨大なオフロードバイク」と表現した方が正確です。
まず、ウインドプロテクション(防風性能)についてです。テネレ700にはラリーマシンを模したスクリーンが装備されていますが、その形状は幅が狭く、垂直に近いため、風防効果は限定的です。
特に身長の高いライダーからは、スクリーンによって跳ね上げられた風がヘルメットのバイザー付近を直撃し、不快な風切り音や頭部の揺さぶり(バフェッティング)を引き起こすという報告が多数なされています。
高速道路を時速100kmで巡航していると、常に頭を揺すられているような感覚に陥り、首への疲労が蓄積しやすいのです。
次に、車体の軽さと重心の高さがもたらす影響です。テネレ700はクラス最軽量レベルの軽さを誇りますが、これは高速道路での横風に対する弱さにも繋がります。
トンネルの出口や橋の上、大型トラックの横を通過する際など、横からの風を受けると車体がフラつきやすく、どっしりとした重量級アドベンチャー(例えばR1250GSなど)のような「矢のように直進する安定感」とは少し質が異なります。
ライダーは無意識のうちにバランスを取ろうとして体幹を使うため、長距離ではじわじわと体力が削られていきます。
そして、シートの快適性です。純正シートはオフロードでのボディアクション(前後の体重移動)を妨げないよう、細身でフラット、そして硬めに設計されています。
これはスポーツ走行には最適ですが、同じ姿勢で座り続ける高速巡航では、お尻への攻撃性が高くなります。多くのオーナーが「2時間が限界」「お尻が割れるように痛い」と嘆いており、ゲルザブ(衝撃吸収材)の追加や社外コンフォートシートへの交換が定番カスタムとなっているほどです。
快適に移動することよりも、「未舗装路に入った瞬間の運動性能」にすべてのステータスを振っているバイク。それがテネレ700です。快適性を求めて買うと、間違いなく後悔することになります。
装備の簡素さとクルーズコントロールの問題
2019年の登場以来、テネレ700はその「シンプルさ」が売りでしたが、2023年以降に登場したライバル車たちと比較すると、装備面での見劣り感が否めなくなってきました。
特に、高速道路を使った長距離移動の必需品とも言える「クルーズコントロール」が、2024年モデルまでの車両には装備されていませんでした(※2025年モデルについての詳細は後述)。
北海道ツーリングや九州への自走など、1日に500km以上を走るようなシチュエーションでは、クルーズコントロールの有無は疲労度に直結します。右手首を常にひねり続けなければならない苦痛は、腱鞘炎のリスクすらあります。
ライバル車たちが、アダプティブ・クルーズコントロール(前車追従)とは言わないまでも、通常のクルーズコントロールを当たり前のように装備している中で、テネレ700だけがアナログな操作を強いられるのです。
また、メーター周りについても、初期型は電卓のようなモノクロ液晶でした。情報は見やすいですが、地図表示やスマートフォン連携などの機能は一切ありません。
最近のバイクはフルカラーTFTメーターが標準となり、手元で音楽再生やナビアプリの操作ができるのが当たり前になりつつあります。「140万円近い大金を払って、これだけしか装備がないのか」というコストパフォーマンスに対する不満は、特にガジェット好きのライダーや、オンロードツーリングを主体とするユーザーから多く挙がる後悔ポイントの一つです。
もちろん、電子制御が少ないことは「故障箇所が少ない」「ブラックボックスがない」という信頼性の裏返しでもありますが、快適でラグジュアリーなバイクライフを夢見ていた人にとっては、そのスパルタンさは「単なる安っぽさ」や「不便さ」として映ってしまうリスクがあります。
足つきや装備の不満を解消する手段と新型
ここまでテネレ700のネガティブな側面ばかりを強調してきましたが、もちろんこれらの問題には対策が存在します。また、メーカー側もユーザーの声に応え、モデルチェンジによって弱点を克服してきています。
ここでは、物理的なカスタムによる解決策や、大幅に進化した2025年モデルの情報について深掘りします。
シート高を下げるローダウンのメリットと代償
「テネレに乗りたい、でも足がつかない」。この切実な悩みを解決するために、アフターパーツメーカー各社から「ローダウンキット」が販売されています。
一般的にはリアサスペンションのリンクプレートを交換することで車高を下げ、さらにアンコ抜きされたローシートを組み合わせることで、最大で約38mm〜40mm程度のシート高ダウン(875mm → 約835mm前後)が可能になります。

835mmになれば、セロー250(830mm)と大差ないレベルになり、多くのライダーが両足をつけるようになります。しかし、ここで注意しなければならないのは、車高を下げることには必ずトレードオフ(代償)が伴うという点です。
【ローダウンによる副作用】
- ハンドリングの変化: リアだけを下げるとキャスター角が寝てしまい、アメリカンバイクのような「曲がらない」ハンドリングになりがちです。これを補正するためにフロントフォークの突き出し量を調整する必要がありますが、メーカーが理想としたバランスは崩れてしまいます。
- オフロード性能の低下: 最低地上高が下がれば、当然ながら岩や丸太にエンジン下部(スキッドプレート)をヒットさせるリスクが高まります。また、サスペンションのストローク奥での挙動が変化し、底付き(ボトムアウト)しやすくなる可能性もあります。
- サイドスタンド問題: 車高が下がると、純正のサイドスタンドでは車体が直立しすぎてしまい、少しの風や傾斜で右側に倒れてしまう危険性が生じます。そのため、ショートサイドスタンドへの交換が必須となり、部品代と工賃で数万円の追加出費が発生します。
「足つきを良くするためにテネレ700を買ったのに、その性能を落とすカスタムにお金を払わなければならない」という矛盾。このジレンマに悩みながらも、立ちゴケのリスクを回避するためにローダウンを選択するオーナーは非常に多いのが現状です。
待望の電子制御と2025年モデルの変更点
これからテネレ700の購入を検討している方にとって、最大の朗報となるのが2025年モデルでの大型アップデートです。ヤマハはついに、テネレ700に電子制御スロットル(YCC-T)を採用しました。これは単なるスロットルの電子化にとどまらず、バイクの性格を大きく変える進化です。

YCC-Tの導入により、エンジンレスポンスを状況に応じて切り替える「ライディングモード(Sport / Explorer)」が搭載されました。これにより、雨の日や疲れている時はマイルドな出力特性に、アグレッシブに走りたい時はダイレクトなレスポンスにと、好みに合わせて調整が可能になります。また、トラクションコントロールの制御もより緻密になり、オフロードでのスライドコントロール性が向上しています。
【2025年モデルの主な進化点】
- 電子制御スロットル(YCC-T): ライディングモード搭載によるドライバビリティの向上。
- 6.3インチTFTメーター: スマートフォン連携(Y-Connect)に対応し、Google Maps連携によるターンバイターン(交差点の進行方向を矢印等で表示)ナビ表示が可能に(機能は仕向け地・仕様により差異あり)。
- スイッチ類の刷新: ジョイスティックによる直感的な操作や、3回点滅機能付きウインカーの採用。
- USB-Cソケット標準装備: 現代のデジタル機器に対応。
ただし、ここで一つ注意点があります。YCC-T化により技術的にはクルーズコントロールの搭載が容易になったはずですが、国内仕様の詳細スペックにおいては、クルーズコントロールが標準装備であるか、あるいはオプション設定されるかの確認が必要です。もし非搭載であれば、依然として「長距離の右手の疲れ」は課題として残ります。
また、これらの進化に伴い、価格は1,452,000円(税込)(※2025年モデル国内価格参照)となり、初期モデルが登場した頃の「120万円台で買える本格アドベンチャー」というお得感は薄れています。この価格上昇を「機能向上による正当な対価」と捉えるか、「高くなりすぎた」と捉えるかが、購入の分かれ目になるでしょう。
(出典:ヤマハ発動機株式会社『Ténéré700 製品ページ』)
チューブレス化キットの導入費用とリスク
「テネレは欲しいけど、やっぱりチューブタイヤは怖い」。そんなユーザーのために、サードパーティメーカーから解決策が提供されています。日本のOUTEX(アウテックス)などが販売している「クリアーチューブレスキット」です。
これは、リムの内側にあるスポークニップル部分を、特殊な強力粘着テープと保護シートで何重にも密閉し、空気が漏れないように加工する製品です。これにより、純正ホイールのままチューブレスタイヤを使用することが可能になります。
導入にかかるコストは、キット単体で前後あわせて約1.5万円〜2万円程度。しかし、施工には非常に高い精度(完璧な脱脂、気泡を入れない貼付技術)が求められるため、多くのユーザーはプロショップに施工を依頼します。その場合、タイヤの脱着工賃なども含めると、総額で4万円〜5万円程度の出費を見込んでおく必要があります。
非常に有用なカスタムですが、リスクもゼロではありません。施工が不完全だと、走行中に徐々に空気が抜ける「スローパンクチャー」を引き起こす可能性があります。
また、長期間の使用でテープが劣化したり、スポーク調整のためにニップルを回す必要が生じた場合は、テープを一度剥がして再施工しなければなりません。「純正の信頼性」を捨てて「利便性」を取るカスタムであるため、あくまで自己責任での導入となります。
航続距離と燃費から見るツーリング適性
ここまでデメリットや対策ばかりを挙げてきましたが、テネレ700にはツーリングライダーにとって非常に心強いメリットもあります。それは「実用燃費の良さと航続距離」です。
テネレ700に搭載される688cc並列2気筒エンジン(CP2)は、低中速トルクが豊かで扱いやすいだけでなく、燃費性能にも優れています。メーカー公表の燃料消費率(国交省届出値)では、WMTCモード値で24.6km/L(2025年モデル)となっており、燃料タンク容量は16リットル(無鉛レギュラーガソリン指定)です。
単純計算でも満タン航続距離はおおむね約390km前後が目安になります(実燃費・航続距離は速度域、積載、路面、気温などで大きく変動します)。
この航続距離は、ガソリンスタンドが少ない北海道や山間部をツーリングする際に絶大な安心感をもたらします。「次のスタンドまで持つかな?」という不安から解放され、ルート選びの自由度が増すのです。
また、あえて20L以上の巨大なタンクを採用しなかったことで、満タン時でも重心の変化が少なく、ハンドリングへの影響が最小限に抑えられている点も、ヤマハの設計思想の表れと言えるでしょう。
ライバル車との比較と売却時のメリット

バイク選びにおいて「比較検討」は欠かせません。テネレ700以外にも、市場には魅力的なミドルアドベンチャーが存在します。ここでは、特によく比較対象に挙がるホンダやスズキのライバル車との決定的な違いを明確にし、あなたがどのバイクを選ぶべきかの判断基準を提供します。
ホンダのトランザルプと比較して分かる快適差
テネレ700の購入を迷っている方が、最も比較検討すべき強力なライバルが、ホンダの「XL750 Transalp」です。なお、トランザルプ側も現実的な選択肢として考えるなら、中古相場や選び方も先に把握しておくと比較が一気にラクになります。
トランザルプは、まさに「テネレが苦手とする部分」を完璧にカバーしている優等生です。まず、シート高は850mmとテネレより25mm低く、シート形状も前方が絞り込まれているため、足つきの安心感は段違いです。
さらに、エンジンは新設計の並列2気筒で91PS(テネレは約73PS)を発揮し、高回転まで突き抜けるようなパワー感があります。
ウインドプロテクションやサスペンションのセッティングもオンロードでの快適性を重視しており、高速道路を使ったロングツーリングでは、トランザルプの方が圧倒的に楽で快適です。
「林道はたまにフラットダートを通る程度で、基本は舗装路を長く走る旅が好き」というユーザーがテネレ700を選ぶと、振動や風、足つきの悪さにストレスを感じ、「トランザルプにしておけばもっと快適だったのに」と後悔する確率は非常に高いでしょう。
逆に、「ガレ場や深い砂利道、廃道探索などを本気で楽しみたい」という場合、トランザルプの腹下の低さ(最低地上高210mm)や、エキゾーストパイプの配置は不安要素となります。オフロード性能の限界値においては、依然としてテネレ700に軍配が上がります。
Vストローム800DEの重量と装備の格差
スズキが満を持して投入した「V-Strom 800DE」も、非常に魅力的な選択肢です。このバイクの最大の特徴は、「最初から全部入り」であることです。
双方向クイックシフター、多彩なドライブモードセレクター、トラクションコントロール、解除可能なABSなどが標準装備されており、エンジンの微振動を打ち消す「スズキクロスバランサー」のおかげで、走行フィーリングは驚くほど滑らかです。装備の豪華さとコストパフォーマンス、そして長距離走行での疲労の少なさでは、テネレ700を凌駕しています。
しかし、V-Strom 800DEには明確な弱点があります。それは「重さ」です。装備重量は230kgあり、2025年モデルのテネレ700(208kg)と比較すると、実に22kgもの重量差があります。22kgといえば、2リットルのペットボトル11本分、あるいはキャンプ道具一式分に相当します。
この重量差は、舗装路を走っている分には安定感としてプラスに働きますが、ひとたびオフロードに入ると牙を剥きます。泥濘地でのコントロールや、転倒した際の引き起こしにおいて、230kgの車体はライダーの体力を容赦なく奪います。「重くても快適で豪華なバイク」が良いならVストローム、「不便でも軽くて操りやすいバイク」が良いならテネレ。ここが運命の分かれ道です。
リセールバリューが高く中古市場でも人気
ここまで読んで「自分にはテネレ700はハードルが高いかも…」と弱気になっている方もいるかもしれません。しかし、もし購入後に「やっぱり自分には合わなかった」となってしまった場合でも、テネレ700オーナーには強力な救済措置があります。それはリセールバリュー(再販価値)が極めて高いことです。

テネレ700は世界的に需要が高く、新車の供給状況によっては納車待ちが発生することもある人気モデルです。そのため、中古車市場でも価格が崩れにくく、高値で取引されています。特に高年式の車両や、純正オプションが装着された車両であれば、驚くほど良い条件で買い取ってもらえるケースが多々あります。
つまり、「試しに乗ってみて、もしダメなら売って乗り換えればいい」という選択をした場合の、金銭的なダメージ(購入額と売却額の差額=実質的なレンタル料)は、他の不人気車に比べて非常に低く抑えられるのです。
この「出口戦略の容易さ」こそが、購入を迷っているユーザーの背中を押す最大の要因かもしれません。迷っているなら、まずは手に入れてみる。それができるのが人気車の特権です。
テネレ700購入前の「よくある質問」と回答
最後に、テネレ700の購入を検討されている方からよく寄せられる疑問について、オーナー視点と実際の運用経験に基づいてお答えします。カタログスペックだけでは分からない「リアルな真実」として参考にしてください。
Q1. ヤマハのCP2エンジンは耐久性が高いと聞きますが、維持費は安いですか?
A. はい、維持費は大型バイクとしては比較的安価な部類に入ります。
搭載されるCP2エンジン(688cc並列2気筒)は、ベストセラーモデル「MT-07」と基本設計を共有しており、世界中でその耐久性が実証されています。部品の流通量も多く、万が一の故障時でもパーツ供給に困ることは稀です。
燃費もリッター25km前後と良好で、使用燃料はレギュラーガソリン仕様(※国内仕様)であるため、ハイオク指定の海外製アドベンチャーと比較すると、毎回の給油コストも抑えられます。オイル交換やタイヤ交換といった消耗品のサイクルも一般的で、特殊な高額整備はほとんど必要ありません。
Q2. オフロード初心者ですが、最初の1台としてテネレ700を選んでも大丈夫ですか?
A. 正直にお答えすると、オフロード走行の経験が全くない状態で、最初の1台としてテネレ700を選ぶのはあまりおすすめしません。
オンロードバイクとして乗る分には問題ありませんが、未舗装路に入ると「重心の高さ」と「足つきの悪さ」が初心者にとって大きな壁となります。200kgを超える車体が傾いた時のリカバリーは、技術と体力を要します。もし「林道を走れるようになりたい」という目的であれば、まずはセロー250やCRF250Lといった軽量なトレールバイクで基本技術を磨いてからテネレにステップアップする方が、結果的に上達も早く、怪我や破損のリスクも減らせるでしょう。
Q3. 高速道路で120km/h巡航は現実的に可能ですか?
A. エンジンのパワーとしては余裕で可能ですが、ライダーの快適性としては「可能だが疲れる」というのが現実です。
73PSのパワーは必要十分で、追い越し加速もスムーズに行えます。しかし、前述の通りウインドプロテクションが完全ではないため、120km/hを超えると風圧との戦いになります。また、フロント21インチタイヤ特有の接地感の希薄さも顔を出し始めます。テネレ700が最も気持ちよく走れる「スイートスポット」は時速100km前後です。この速度域であれば、エンジンの鼓動感を楽しみながら、どこまでも平和に走り続けることができます。
Q4. 2025年モデルは価格が上がりましたが、それだけの価値はありますか?
A. 個人的には、その価格差以上の価値があると考えます。
最大の理由は「電子制御スロットル(YCC-T)」の採用です。これにより、雨天時や疲労時に穏やかな出力特性を選べるようになったことは、長距離ツアラーとしての資質を飛躍的に高めています。また、スマホ連携機能付きのTFTメーターやUSB-Cソケットなど、現代のツーリングに必須の装備が標準化されたことで、後付けのコストや手間が減ることも考慮すれば、実質的な価格差は縮まります。「長く乗る相棒」として考えるなら、最新の2025年モデルを選ぶのが賢明な選択と言えるでしょう。

それでもテネレ700を選んで後悔しないために
ここまでテネレ700のリアルな実情、メリットとデメリット、そしてライバル車との比較をお伝えしてきました。最後に、この記事の要点を整理します。購入してから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、以下のチェックポイントをもう一度心に留めておいてください。
- 足つきの悪さは「オフロード走破性」の証であり、ある程度の覚悟を決めるか、ローダウン費用(3〜5万円)を予算に組み込む必要がある。
- パンク修理の手間や装備の簡素さは確かに不便だが、それは構造がシンプルで信頼性が高く、旅先でのトラブルに強いというメリットの裏返しでもある。
- 「快適な移動」を最優先するならトランザルプやVストローム、「道なき道を走る冒険」を最優先するならテネレ700を選ぶべき。
- 2025年モデルは電子制御(YCC-T)が強化され使い勝手が大幅に向上したが、価格も上昇しているため、予算との相談が必要。
- リセールバリューが非常に良いので、どうしても迷っているなら「まずは乗ってみる」という選択も、経済的なリスクは意外と少ない。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
テネレ700は、決して「誰にでも優しい優等生」のようなバイクではありません。乗り手を選びますし、不便なところもたくさんあります。しかし、その「不便さ」すらも冒険の一部として愛し、不自由を楽しむことができるライダーにとっては、これ以上ない最高の相棒になります。
もしあなたが、舗装路の先にある未知の景色を見たいと本気で願い、そのために少しの苦労を厭わない覚悟があるなら、ぜひその一歩を踏み出してみてください。
そのシートの高さの分だけ、そこから見える世界は間違いなく変わるはずです!