こんにちは。バイクブログ「motofrontier」運営者の「マコト」です。
ホンダのフラッグシップとして鳴り物入りで登場したVFR1200F。先進的なデザインとV4エンジン、そして世界初のDCT搭載と、話題性はじゅうぶんだったはずなのに、市場では「VFR1200Fは不人気」という声をよく聞きますよね。
なぜあれほどの意欲作が、正当に評価されなかったのか。そこには、ツアラーとして致命的とも言われる航続距離の問題や、無視できない多くの欠点の存在が噂されています。特に「熱い」「重い」といったネガティブなワードは常に付きまといますし、国内仕様のパワーが抑えられていて「つまらない」と感じた人もいたようです。
一方で、DCTの評価は非常に高く、シャフトドライブの快適性も見逃せません。後期型でどこまで改善されたのか、そして今から中古で買うのは本当にアリなのか。私なりに、その理由と現在の価値についてじっくりと調べてみました。
あなたは今、こんなことで悩んでいませんか?
- VFR1200Fの「不人気」の本当の理由が知りたい
- オーナーが感じた具体的な欠点(熱さ、重さ、航続距離)を知りたい
- DCTや後期型の評価が気になる
- 今から中古で買うのはアリか判断したい
もし一つでも当てはまったなら、この記事があなたの疑問をすべて解決します。
VFR1200Fが不人気と言われる3つの理由

VFR1200Fが「不人気」というレッテルを貼られてしまったのには、大きく分けて3つの決定的な理由があるかなと思います。ホンダが誇る先進的な技術や野心的なコンセプトが、残念ながら当時の市場が求める「スポーツツアラー」のど真ん中のニーズとは、少しズレてしまっていたのかもしれませんね。その具体的な中身を見ていきましょう。
ツアラーとして致命的な航続距離
まず、スポーツツアラーとして最も重要視されるポイントの一つが「航続距離」です。長距離を快適に走るためのバイクなのに、頻繁に給油が必要では本末転倒ですよね。
VFR1200Fの燃料タンク容量は、18.0L(または18.5L )と、1200ccオーバーのツアラーとしてはかなり小さめでした。この設計は、エンジンのマスの集中化 という設計思想を優先した結果かもしれませんが、実用面で大きな犠牲を強いることになりました。
あるオーナーは、燃費を仮に16km/Lと仮定しても「300km走れないってことになるよね。ツアラーとしては結構痛い内容だね」と試算しています。これはあくまで仮定ですが、実走レビューでもその短さは裏付けられています。
報告によれば、高速道路主体の走行ですら燃料警告灯が230kmで点滅し、ストップ&ゴーの多い通勤使用では、わずか200kmで点灯した という声もあります。
「ツアラー」を名乗りながら、実質200km~230km程度で次の給油所を気にしなければならないのは、長距離ツーリングにおいて致命的な欠点であり、大きなストレスだったと言えるでしょうね。
競合モデルとの比較
例えば、当時の競合と目されたカワサキの1400GTRのタンク容量は22Lでした 。この差は、実際のツーリングシーンにおいて無視できない「安心感」の差として現れます。VFR1200Fの設計は、明らかに実用性よりもコンセプトを優先した結果と言えそうです。
重い車体と耐え難い熱さ

次に、日常的な扱いや快適性に直結する「重さ」と「熱」の問題です。この2点は、オーナーレビューで最も多く指摘されるネガティブなポイントかもしれません。
メガスポーツ級の「重さ」と「足つき」
VFR1200Fの車両重量は、約260kg級 とされています。これはZZR1400やハヤブサといったメガスポーツと肩を並べるヘビー級です。スポーツツアラーとして見ても、決して軽い部類ではありません。
この重量に加え、オーナーからは「とにかく重い」というストレートな声のほか、「足付き最悪」という報告も多数上がっています。身長171cm・股下80cmのオーナーですら、またがったままの取り回しはできず、「片側1車線道路でのUターンはかなりきつい」と証言しています。
ツーリング先での不慣れな道や、傾斜のある駐車場での取り回しを想像すると、この「重さ」と「足つき」の組み合わせは、かなりのプレッシャーになりますよね。
構造的欠陥とも言える「熱さ」
そして、VFR1200Fの評価を決定づけた最大の欠点が、エンジンの「熱」です。
オーナーレビューは「とにかく熱い」「ただただ熱い」と、その深刻さを物語っています。具体的には、「ふくらはぎやくるぶしはすぐ熱くなり、長時間になると股間まで熱くなってきます」と、快適性を通り越して苦痛の領域に達していることがわかります。
これは単なる「故障」や「個体差」ではありません。海外のオーナーからは、新車時にオーバーヒートを疑ってディーラーに調査を依頼した(結果は「異常なし」) という報告や、頻繁な停止を伴う走行で熱が不快になる との指摘もあります。
この猛烈な熱の原因は、VFR1200Fの設計コンセプトそのものにありました。ホンダがマスの集中化 のために採用した「76度狭角V4」レイアウト は、必然的に後方シリンダーバンクがライダーの股下直近に配置されます。
1236ccの高出力エンジン から発生する膨大な熱の逃げ場はなく、さらにカウルの形状がその熱をライダーの脚部へ直撃させる構造 になっていたようです。
先進的な「マスの集中」という設計思想は、現実世界のライダー、特に夏場の渋滞路では「耐え難い熱」という苦痛をもたらす結果となったのです。
▼ V4エンジンの「熱」は宿命?
VFR1200Fの「熱さ」はかなり強烈ですが、V4エンジンはその構造上、多かれ少なかれ熱の問題を抱えています。
弟分であるVFR800Fも、リアバンク(後方シリンダー)がライダーの股下に近いため、「内股が熱い」という点は共通しています。 VFR1200Fほどの熱量ではないかもしれませんが、V4ツアラーを選ぶ上での「宿命」として、ある程度の割り切りは必要なのかもしれませんね。
→ VFR800Fの熱問題やVTECのクセについて詳しく見てみる
国内仕様のパワーと高額な価格
最後の理由は、日本のライダーが直面した、価格と性能の深刻なミスマッチです。
2012年当時の国内価格は1,575,000円(税抜1,500,000円)と、フラッグシップにふさわしい高額な設定でした。
ホンダ自身も、国内の年間販売計画台数をわずか200~300台 と設定しており(詳細は ホンダ公式ニュースリリース 2012年2月28日発表 などを参照)、これはマス市場を狙ったモデルではなかったことを示唆しています。
しかし、問題はその価格で提供されたスペックです。国内ライダーに提供されたのは、最高出力がわずか111ps/8500rpmにまで抑えられた国内仕様 だったんです。
一方で、このエンジンの本来のポテンシャル(海外仕様)は172ps や173PS とされていました。つまり、国内のオーナーは150万円を超える対価を払いながら、海外仕様から60馬力以上もパワーを削がれたモデルを手にすることになったわけです。
260kg級の車体 に111psのパワー。この「フラッグシップの見た目と価格」と「ミドルクラス並みの国内パワー」という大きなギャップが、当時のフルパワーが当たり前だった競合他社(例:ZZR1400 )のオーナーから「つまらない」 と酷評される最大の要因となり、多くの国内ライダーを失望させたのは想像に難くありません。
オーナーを悩ませた具体的な欠点
スペック上の大きな問題点(航続距離、重さ、熱、パワー)に加えて、VFR1200Fには日常の使い勝手、いわゆるエルゴノミクスやユーティリティの面でも、オーナーを悩ませる具体的な「欠点」がいくつも存在しました。こうした細かな不満の積み重ねが、「不人気」のイメージをさらに強固なものにしてしまったようです。
快適性を損なう硬いシート

長距離を走るツアラーにおいて、シートの快適性は航続距離と同じくらい重要です。しかし、VFR1200Fの純正シートは、オーナーから非常に厳しい評価を受けています。
その特徴は「カチカチツルツル前傾斜」という痛烈なレビューに集約されています。「硬い」のはもちろん、「ナイロン製のパンツでは滑りやすい」ため、数時間の走行でお尻が痛くなる だけでなく、大きな問題を引き起こしました。
前傾した滑りやすいシート形状によって、ライダーはブレーキングや巡航中に常に前方へ滑らされ、「前に滑りギョクを圧迫します」という深刻な不快感を生み出しました。タンデム(二人乗り)においても、同乗者が「滑るので怖い」と不安を感じる品質だったようです。
快適性を奪う「負の相乗効果」
このシートの問題は、単体で終わらず、他の欠点と組み合わさって「負の相乗効果」を生み出していました。
▼ 快適性を奪う「負の相乗効果」の流れ
- やや前傾のライディングポジション
- 硬く滑りやすい前傾シート と組み合わさる
- ライダーは常に前方に滑らされ、タンクを圧迫 & 手首への負担が増大
- 股下が「熱源(エンジン)」にさらに近づく
ポジション、シート、熱という3つの欠点が複合的に作用し、VFR1200Fの長距離快適性を根本から奪っていたことがわかります。
積載性皆無のユーティリティ

ツアラーであれば、カッパや工具、車検証、ETCカードなど、最低限の荷物を収めるスペースを期待するのが普通ですよね。しかし、VFR1200Fはそのささやかな期待をも裏切りました。
オーナーレビューは「シート下収納皆無なのでパニアが無ければ車検証入れておく所がありません」と断じています。本当に、最小限のスペースすらなかったようです。
メンテナンスフリーでツーリング向きのシャフトドライブ を採用しながら、なぜ積載性をここまで完全に無視したのか。このバイクの「アイデンティティの混乱」を象徴するような設計思想のアンバランスさを感じます。
事実上、高価な純正パニアケースの同時購入が必須という仕様であり、購入時の総額をさらに押し上げる要因にもなっていたでしょうね。
V4エンジンは本当につまらないか
VFR1200Fの核心とも言える、新世代V4エンジン。
ホンダはこのエンジンに並々ならぬ情熱を注いでいました。しかし、そのフィーリングもまた、ライダーの期待とは異なるものだったようです。
ホンダが狙った「技術的な鼓動感」
ホンダはVFR1200FのV4エンジンに、「28度位相クランク」という極めて独創的な技術を採用しました。従来の90度V型から76度へと狭角化 し、360度クランクでありながらクランクピンを28度ずらす。
これにより、不快な一次振動を理論上ゼロ にしつつ、256度 → 104度 → 256度 → 104度という不等間隔爆発を実現。ホンダはこの設計により、V4ならではの「優れたトラクション性能と鼓動感」、そして「スムーズな回転フィール」が高次元で融合したと説明していました。
ライダーが感じた「官能性の不足」
しかし、このホンダのエンジニアが追求した「技術的なビート感」は、残念ながら多くのライダーの感性には響かなかったようです。
ZZR1400(直列4気筒)と比較したオーナーからは、「エンジンの官能性をV4エンジンでは感じなかった」「一言で、つまらないと私は感じた」 という、非常に厳しい評価が下されています。
技術的な側面からも、この「つまらなさ」は裏付けられています。別のレビューでは、1200ccという大排気量にもかかわらず、「約4000 rpm以下では、バイクが多少もたつくように感じられる」と、期待された低速トルクの不足が指摘されています。
ホンダが「設計」した鼓動感は、ライダーが求める「官能的なフィーリング」や「どこからでも加速する大排気量のトルク感」とは異なり、「スムーズだが、刺激に欠ける」エンジンだと評価されてしまったのです。
独特すぎるスイッチ配置
これは地味なポイントに聞こえるかもしれませんが、日常のライディングでかなりのストレスになる部分です。ホンダは伝統的に使いやすい操作系で評価されてきましたが、VFR1200Fではその伝統を自ら覆す「改悪」が行われました。
レビューによれば、ホンダはホーン(警音器)とウインカー(インジケーター)のスイッチ位置を、従来の世界標準とは「入れ替え」て配置したのです。ホンダ側の理屈としては、「親指の移動距離を減らすため」だったようですが…。
その結果、どうなったか。ライダーが何十年もかけて培ってきた無意識の操作(マッスルメモリー)が完全に裏目に出ます。「ウインカーを操作しようとして、何度もホーンを鳴らしてしまった」という報告が相次ぎました。交差点で曲がるつもりが、意図せずホーンを鳴らしてしまうわけです。
「ホーンを鳴らさないように、親指がどこに行くかに集中しなければならない」という、ライディングの安全性や快適性を著しく損なう本末転倒な状況を生み出しました。誰もが望んでいなかったこの変更は、ホンダの「革新」がユーザーの利便性から乖離してしまった象徴的な欠点となりました。
後期型で欠点は改善されたか

市場からの厳しい評価を受け、2012年にはマイナーチェンジが行われ、トラクションコントロールが追加される など、電子制御面でのアップデートはありました。
では、これまで挙げてきた根本的な欠点は改善されたのでしょうか?
残念ながら、2013年式のモデルに対するオーナーレビュー を見ても、不満点はまったく変わっていません。「熱い」、「ポジションが辛い」、「シートがカチカチツルツル」、「重い・足つきが最悪」といった、VFR1200Fの「不人気」の根本原因となった欠点は、後期型になっても何一つ解決されていなかったのです。
中古車選びの注意点
後期型はトラクションコントロールが装備されるなど、機能的な魅力は増しています。しかし、VFR1200Fの根本的な欠点である「熱」「重さ」「航続距離」「積載性」「快適性」については、前期型と後期型で大きな差はないと考えるべきでしょう。「後期型だから安心」というわけではない点に、十分な注意が必要です。
唯一無二の魅力と中古市場での再評価
ここまでVFR1200Fの数多くの欠点ばかりを挙げてしまいましたが、もちろんこのバイクにしかない強力な「武器」、唯一無二の魅力も存在します。そうでなければ、今なお乗り続けているオーナーがいるはずありませんよね。
その独特の魅力が、発売から10年以上が経過した今、新車当時のネガティブな評価が薄れ、中古市場で一部のライダーたちに再評価されている理由かなと思います。
DCTの評価は非常に高かった
VFR1200Fの「不人気」を語る上で絶対に誤解してはならないのが、車体に対する酷評とは対照的に、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)に対するオーナーの評価は非常に高かったという事実です。
レビューでは「DCTでクラッチが無いのが楽で良い」、「DCTも渋滞には、非常に楽」、「DCTなんでクラッチ操作から解放される」と、その快適性と利便性は絶賛されています。
開発者のインタビューでも、DCTが(MTでの)人間の操作よりも速いケースがある と語られており、その技術的な先進性と優位性は本物でした。VFR1200Fが「不人気」だった理由は、世界初のバイク用DCTという技術のせいではなかった、というのははっきりしていますね。
先進技術の「無駄遣い」?
むしろ、私個人としては、VFR1200Fの本当の「罪」は、この世界初の革新的なDCTという素晴らしい技術を、熱、重さ、航続距離、エルゴノミクスといった根本的な欠陥を多数抱えたプラットフォームに搭載してしまったことにあるのではないか、とさえ思います。
バイク本体の「不人気」が、DCTという優れた技術の初期の普及とイメージに、少なからず悪影響を及した可能性は否定できないでしょうね。
高速巡航を支えるシャフトドライブ

DCTと並ぶ、VFR1200Fのもう一つの大きな魅力が、メンテナンスフリーの「シャフトドライブ」を採用している点です。
長距離を走れば走るほど、チェーンの清掃、注油、そして伸びの調整といった定期的なメンテナンスは面倒になるものです。特に数日間にわたるロングツーリングでは、その手間は馬鹿になりません。
シャフトドライブは、そうしたチェーンメンテナンスの煩わしさからライダーを完全に解放してくれます。この「メンテナンスフリー」という特性は、ツーリングライダーにとって計り知れないメリットです。
この静粛でクリーンなシャフトドライブと、前述のDCTの組み合わせ。この2つが生み出す、イージーで快適な高速長距離クルージング性能こそが、VFR1200Fの最大の美点であり、アイデンティティと言えるでしょう。
カスタム前提で輝くツアラー性能

ノーマルの状態では多くの欠点を抱えるVFR1200Fですが、それでもなお乗り続けようとするオーナーが存在することも事実です。彼らは、メーカーが提供しなかった「最適解」を、自らの手(と費用)で見出しています。
ある2013年式DCTモデルのオーナーは、その強烈な第一印象を「納車日に100キロ走った時に思ったことはこれは無理!売ろう!でした」と語っています。
しかし、このオーナーは売却を選ばず、「問題点は多々あれどカスタムすることで改善できます」とし、「長く乗り続けようと思えるようになりました」と述べています。
VFR1200Fにおけるカスタムは、趣味や嗜好としての「ドレスアップ」ではなく、バイクを自分にとって「使用可能」な状態にするための「必須作業」としての側面が強いのが特徴です。
以下は、オーナーが指摘する主要な欠点と、それを克服するための具体的な対策(カスタム)の一例です。中古車購入希望者にとっては、そのまま「必須カスタムリスト」になるかもしれません。
| 指摘された欠点(不満) | オーナーによる必須の対策(カスタム)5 |
|---|---|
| 熱:「とにかく熱い」。ふくらはぎ、くるぶし、股間への熱。 | 「ブーツは少し長め厚め」「革パンにすることでなんとか熱さは防御」。 |
| ポジション/快適性:「長時間乗ると疲れる」。 | 「ハリケーンバーハンドルキットで4cmアップ」し、上体を起こす。 |
| シート:「カチカチツルツル前傾斜」「前に滑りギョクを圧迫」。 | 「輸入の社外シートに変更」し、滑りと硬さを改善。 |
| ニーグリップ/滑り:滑りやすい。 | 「ニーグリップパッド大きめのを付けてしっかりニーグリップ」。「革パンツなど滑りにくいパンツで対策」。 |
| 足つき/重さ:「足付き最悪」「とにかく重い」。 | 「上げ底ブーツ5cm+シークレットインソール2cm」で対応。 |
| 積載性:「シート下収納皆無」。 | (パニアケースの装着が必須となる) |
このリストは、VFR1200Fがノーマルの状態ではスポーツツアラーとしていかに破綻していたか、そしてオーナーが多大な追加投資と工夫によって、ようやく「乗れる」バイクに仕上げていたという実態を雄弁に物語っています。
中古で乗るならマニュアルかDCTか
これはVFR1200Fを中古で探す上で、最大の悩みどころかもしれませんね。
もちろん、MT(マニュアルトランスミッション)には、バイクを自ら操る楽しさ があります。特に、ホンダがこだわったV4エンジンのフィーリング をダイレクトに味わいたいという方には、MTも良い選択肢です。
ですが、私個人の意見としては、VFR1200Fの最大の「功績」であり、オーナー評価も極めて高い「DCT」 を体験してこそ、あえてこのバイクを選ぶ意味があるのかなと思います。
特に、このバイクが最も得意とする高速長距離クルージングや、避けられない渋滞路での圧倒的な疲労軽減効果 は、一度味わうと戻れないほどの快適さです。左手・左足の操作から解放されるメリットは、長距離になればなるほど大きくなります。
VFR1200Fならではの「唯一無二の快適性」を最大限に享受したいのであれば、私はDCTモデルをおすすめしたいですね。
VFR1200Fに関するよくある質問(Q&A)
Q1. VFR1200Fはなぜあんなに「熱い」のですか? 対策はありますか?
A. これはVFR1200Fの設計に起因する構造的な問題ですね。
マスの集中化のために採用された「76度狭角V4エンジン」のレイアウト上、後ろ側のシリンダーがライダーの股下近くに配置されています。そのため、1236ccのエンジンから発生する熱が逃げ場を失い、さらにカウルの形状がその熱をライダーの脚(特にふくらはぎやくるぶし)に直撃させてしまうんです。
オーナー様が実践している対策としては、「厚手のライディングブーツや革パンツなどで物理的に防御する」というのが最も現実的なようです。
Q2. なぜ国内仕様はあんなにパワーが低い(111ps)のですか?
A. 確かに、海外仕様が170馬力オーバーなのに対して、国内仕様は111馬力と、60馬力以上も抑えられています。これは「不人気」と言われた大きな要因の一つですね。
明確な公式発表はありませんが、一般的には、当時の国内における排ガス規制や騒音規制、あるいはメーカーの自主規制といった日本国内のレギュレーションに適合させるためだった、とされています。260kg級の車体に対してこのパワーでは「つまらない」と感じてしまうライダーが多かったのも無理はないかもしれません。
Q3. DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)は壊れやすいですか? 評価はどうですか?
A. 私が調べたオーナーレビューの中では、DCTが「壊れやすい」といったネガティブな情報は特に見当たりませんでした。
むしろ評価は非常に高く、「クラッチ操作から解放されるのが楽」、「渋滞が非常に楽」と、その快適性を絶賛する声が多かったです。開発者の方も「MT操作より速いケースがある」と語っており、技術的な完成度も高かったようです。
VFR1200Fの車体には多くの欠点が指摘されましたが、DCTの評価は一貫して高かった、というのが私の印象です。
Q4. 中古でVFR1200Fを買う場合の注意点を教えてください。
A. まず大前提として、後期型(2012年以降)であっても、熱、重さ、航続距離の短さ、積載性の皆無といった根本的な欠点は改善されていないことを受け入れる必要があります。
その上で、以下の点をチェックするのがおすすめです。
- 快適性のカスタム: ポジションが辛いため、ハンドルがアップタイプに交換されているか。また、シートが硬く滑りやすいため、社外品の快適なシートに交換されているかは、乗り出し後の満足度を大きく左右します。
- 積載性: 純正パニアケースが装着されているか。VFR1200Fはシート下収納が皆無なので、パニアがないとツーリングバイクとしての実用性はゼロに近いです。
- DCTかMTか: VFR1200Fならではの快適性を最大限に味わいたいのであれば、オーナー評価の非常に高いDCTモデルをおすすめします。
これらの欠点を理解し、カスタムである程度対策できる(あるいは対策済み)なら、DCT+シャフトドライブという唯一無二の高速ツアラーとして、中古価格は非常に魅力的だと思いますよ。
VFR1200Fの不人気理由と現在の価値
最後に、VFR1200Fが「不人気」とされた理由と、その現在の価値について、私なりの結論をまとめたいと思います。
- ツアラーとして致命的だった航続距離の短さ
- 「熱い」「重い」という、設計に起因する構造的な欠点
- 高額な新車価格と、それに見合わない国内仕様のパワーとのギャップ
- 硬いシートや積載性皆無など、ライダーの実用面を軽視した部分
- ホーンとウインカーの配置入れ替えなど、独特すぎる操作系
VFR1200Fが「不人気」とされてしまった理由は、単一の欠点ではなく、ホンダが追求した「技術的野心」と、ライダーが現場で求めた「快適性」や「実用性」との間に、修復不可能な「ズレ」がいくつもあったからかなと思います。
海外のフォーラムでは「The most misunderstood(最も誤解された)バイク」 と評されることもありますが、日本国内のオーナーレビューを深く分析する限り、それは「誤解」ではなく、設計に内在する無数の「矛盾」に対する「的確な評価」であったと私は感じます。
ですが、見方を変えれば、DCTとシャフトドライブがもたらす高速巡航の快適性は、他のどのバイクでも味わえない唯一無二のものです。これは間違いありません。
上で挙げたような数々の欠点を「そういうバイクだ」としっかり理解し、それらを許容できる、あるいはカスタム で対策する情熱がある人にとっては、ホンダの技術的野心が詰まったフラッグシップモデルが中古で安価に手に入る今こそ、最高の「高速ツアラー」になる可能性を秘めていると思いますよ。