美しい4気筒エンジンを心臓部に持ち、官能的なエキゾーストノートを奏でるホンダCB650R。その洗練された「Neo Sports Cafe」のデザインを活かし、自分だけの特別なカフェレーサー仕様に仕上げたいと考えている方は多いのではないでしょうか。
しかし、いざカスタムの世界に足を踏み入れようとすると、「カフェレーサータイプとはどういうタイプですか?」という基本的な疑問から、象徴的なロケットカウルなどの具体的なカスタムパーツ選び、さらには最も奥深いマフラー交換の複雑な問題まで、次々と知りたいことが出てくるものです。
特にマフラーに関しては、手軽なマフラーのスリップオンは存在するのか、一度は夢見るマフラーの2本出しは可能なのか、そして公道を走る上で最も重要なマフラーの車検対応の問題があります。
さらに、伝説的なマフラーのヨシムラや、高品質なチタン製品で知られるマフラーのアールズギアといった人気ブランドの違いも気になるところです。
この記事では、そんなCB650Rのカフェレーサーカスタムに関するあらゆる疑問に、深く、そして丁寧にお答えし、あなたの理想の一台を創り上げるための完全ガイドをお届けします。
あなたは今、こんなことで悩んでいませんか?
- ✅CB650Rをカフェレーサーにするには何から始めればいいか、具体的な手順が知りたい。
- ✅どんなカスタムパーツがあって、それぞれの費用や性能の違いを詳しく比較したい。
- ✅おすすめのマフラーブランドのサウンドや特性を理解して、自分に合った一本を選びたい。
- ✅法律を守り、安心して乗り続けるための車検に通るカスタムのポイントが分からなくて不安。
もし一つでも当てはまったなら、この記事があなたの疑問をすべて解決します。
CB650Rをカフェレーサーにする魅力

ホンダCB650Rは、ノーマルの状態でも極めて完成度の高いデザインと走行性能を誇る一台ですが、「カフェレーサー」というカスタムのフィルターを通すことで、その魅力はさらに深まり、オーナーだけの特別な個性を放ち始めます。
このセクションでは、カフェレーサーという文化の奥深いルーツを紐解き、なぜCB650Rが現代における最高のカスタムベース車両と称されるのか、その理由を徹底的に解説します。
カフェレーサータイプとはどういうタイプですか?
結論から言うと、カフェレーサーとは1960年代のイギリスで、ロックンロールの音楽と共に生まれたストリートレース文化が発祥のカスタムスタイルです。当時、ロンドンのエースカフェなどに集った「ロッカーズ」と呼ばれる若者たちが、カフェに置かれたジュークボックスで曲をかけ、その一曲が終わるまでに公道コースをいかに速く走り抜けられるかを競った、スリリングな遊びがその始まりとされています。
彼らは自身のバイク(主にトライアンフやノートンなど)をより速く、よりスポーティーに改造しました。空気抵抗を減らすためにハンドルを低く構えたセパレートハンドル(セパハン)や、深いバンク角と積極的なライディングを可能にするバックステップを装着。
不要な部品は取り払い、シートは一人乗り仕様のシングルシートに交換し、そしてスタイルを決定づけるロケットカウルを取り付けることで、当時のマン島TTなどを走るファクトリーレーサーさながらの外観と性能を追求したのです。
つまり、カフェレーサーとは「公道用バイクをベースに、速さを求めて無駄を削ぎ落とした手作りのレーシングマシン」がその本質です。機能性を突き詰めた結果として生まれた、シンプルで戦闘的な美しいスタイルが、時代を超えて多くのライダーを魅了し、現代にまで受け継がれています。

CB650Rのネオスポーツカフェコンセプト

CB650Rがカフェレーサーカスタムのベースとしてこれほどまでに人気が高い最大の理由は、他ならぬ開発者であるホンダ自身が、このバイクを「Neo Sports Cafe(ネオスポーツカフェ)」という明確なコンセプトの下で生み出した点にあります。
このコンセプトは、カフェレーサーが持つ伝統的で普遍的なバイクの魅力と、最新技術がもたらすモダンで高性能な要素を高い次元で融合させるというものです。ホンダの公式ページでも語られているように、そのデザインは凝縮感のある台形のプロポーションを基本としています。
クラシカルな丸目のヘッドライトは最新のLEDですし、トラディショナルなシルエットの中に、倒立フォークやラジアルマウントキャリパー、アシストスリッパークラッチ、そしてスリップを抑制するHSTC(ホンダセレクタブルトルクコントロール)といった、現代のスポーツライディングに不可欠な装備が惜しみなく投入されています。
そして、このバイクのデザインを最も象徴しているのが、エンジン下から美しくカーブを描きながら伸びる4本のエキゾーストパイプです。
これは往年の名車「CB400フォア」を彷彿とさせるだけでなく、直列4気筒エンジンが持つメカニカルな美しさを最大限にアピールする造形美の核となっています。
このように、CB650Rは生まれながらにしてカフェレーサースタイルとの極めて高い親和性を持っているため、最小限のカスタムで、まるでメーカーが作り上げたかのような完成度の高い一台に仕上げることが可能なのです。
カスタムで広がるスタイルの可能性
前述の通り、CB650Rはカスタムの素地として非常に優れています。そのため、オーナーの個性や目指す方向性に応じて、実に様々なスタイルのカスタムを楽しむことができます。
その多様性を示す好例が、ヨーロッパ最大級のカスタムバイクイベント「ホイールズアンドウエーブス」などで披露されるカスタムマシンたちです。
フランスのビルダーはCB750Fourへのオマージュとしてカーボンパーツを多用したクラシックレーサー風カスタムを製作し、また別のスペインのビルダーは日本のコミック『AKIRA』にインスパイアされた近未来的なストリートファイター風マシンを創り上げています。
このように、一つのパーツ、例えばカウル一つ、ハンドル一つを変えるだけでバイクの印象は劇的に変化します。レトロ感を強調して60年代の雰囲気に浸ることも、よりモダンでアグレッシIVEなパフォーマンス志向に振ることも自由自在。CB650Rのカスタムは、オーナーの創造力を無限に刺激し、まだ見ぬ可能性を秘めていると言えるでしょう。
CB650Rカスタムの主な方向性
- クラシック路線: ワイヤースポークホイールやタックロールシートなどを採用し、60年代当時の雰囲気を再現するスタイル。
- モダンパフォーマンス路線: カーボンパーツや高性能な足回りを組み込み、現代的な解釈で走行性能を突き詰めるスタイル。
- ストリートファイター路線: アップハンドルやショートテール化で、より軽快でアグレッシブな街乗り仕様を目指すスタイル。
主要なカスタムパーツと選び方

CB650Rを理想のカフェレーサースタイルへと昇華させるためには、いくつかのキーとなるカスタムパーツの選定が不可欠です。それぞれのパーツが持つ意味や効果を理解し、自分の目指すスタイルに合わせて賢く選ぶことが重要になります。
ここでは、スタイルを決定づける代表的なパーツと、その具体的な選び方のポイントについて、さらに深掘りして解説していきます。
象徴的なロケットカウルの選び方
カフェレーサーの魂とも言えるパーツが、空気抵抗を低減するために生まれた流線形の「ロケットカウル」です。このパーツはスタイルを決定づける非常に象徴的な存在であり、装着するだけで一気に本格的な雰囲気を纏うことができます。
ただ、CB650Rのモダンなデザインとのバランスを考えると、往年のレーサーのような大掛かりなフルカウルよりも、ヘッドライト周りをスタイリッシュに演出する「ビキニカウル」や「メーターバイザー」が現実的で人気の選択肢となっています。これらはノーマルのデザインを活かしつつ、カフェレーサーのエッセンスを手軽に加えられるのが魅力です。
カウル選びの比較ポイント
種類 | 見た目の印象 | 防風性 | 価格帯の目安 | 取り付け難易度 |
---|---|---|---|---|
メーターバイザー | さりげなくシャープな印象 | 小 | 20,000円~ | 低 |
ビキニカウル | カフェレーサー感が一気に増す | 中 | 30,000円~ | 中 |
ロケットカウル | 本格的でクラシカルなレーサー | 大 | 100,000円~ | 高 |
本格的なロケットカウルは汎用品からの加工やワンオフ製作が必要になる場合が多く、費用と難易度が高くなります。
これらのパーツは、見た目の変化だけでなく、特に高速道路などでの長距離巡航時にライダーの胸元に当たる風圧を軽減し、疲労を大幅に和らげるという実用的なメリットも見逃せません。
定番のセパハンとバックステップ

理想のカフェレーサーライディングポジションを実現するために不可欠なのが、「セパレートハンドル(セパハン)」と「バックステップ」の2点セットです。
ノーマルのCB650Rはややアップライトなバーハンドルですが、これをフロントフォークに直接取り付ける低いセパハンに変更することで、ライダーの上体は自然と前傾姿勢になります。
さらに、ステップ位置を後方・上方へ移動させるバックステップを組み合わせることで、膝の曲がりが深まり、ニーグリップしやすく、体重をかけやすい攻撃的なフォームが完成します。これにより、ワインディングでの素早い切り返しや、深いコーナリング時にバイクを操る一体感が格段に向上するのです。
ポジション変更に伴う注意点
スポーティーな走行には絶大なメリットがある一方、デメリットも存在します。強い前傾姿勢は手首や首、腰への負担が大きくなるため、長時間のツーリングや渋滞の多い市街地走行では疲労が溜まりやすくなります。また、上体が起きている時よりも前方下方の視界が狭くなる傾向があるため、慣れるまでは慎重な運転が求められます。
パーツを選ぶ際は、デザインだけでなく、角度調整機能が付いているモデルを選ぶと、自分の体格や好みに合わせた微調整が可能になり、快適性を損なわずに理想のポジションを見つけやすくなります。
アンダーカウルでレーシーな印象に
車体下部を引き締め、よりレーシーでマッシブな印象を与えるパーツが「アンダーカウル」です。元々CB650Rは美しいエキゾーストパイプとコンパクトなエンジン周りの造形が魅力ですが、アンダーカウルを装着することで、視覚的な重心が下がり、どっしりとした安定感のあるフォルムが生まれます。
このパーツは、見た目の変化だけでなく、エンジン下部への泥はねや飛び石を防ぐ保護的な役割や、高速走行時に車体下部の空気の流れを整える(エアロダイナミクスの向上)といった機能的な側面も持っています。ホンダの純正オプションとしても用意されているほど定番のカスタムですが、社外品もそれぞれ個性的なデザインで豊富にラインナップされています。
アンダーカウル選びのポイント
- デザイン: 純正に近いさりげないデザインから、エッジの効いたアグレッシブなデザインまで様々。自分の目指すスタイルに合わせて選びましょう。
- 素材: 一般的には軽量で成形しやすいABS樹脂製が多いですが、より本格的なFRP製やカーボン製も存在します。
- 塗装: 純正色に塗装済みの製品を選ぶと、後から塗装する手間とコストが省け、車体との一体感も高まります。
取り付けは基本的にボルトオンで可能ですが、製品によってはマフラーとの干渉などを避けるための微調整が必要になる場合もあります。
海外製のカスタムパーツにも注目

国内メーカーの高品質なパーツも魅力的ですが、より個性的で他の人とは違う一台を目指すなら、海外製のカスタムパーツに目を向けることで選択肢は一気に広がります。特にバイク文化が成熟しているヨーロッパでは、CB650R用のデザイン性と品質に優れたパーツが数多く開発されています。
例えば、イタリアのrizoma(リゾマ)は、アルミ削り出しの緻密で美しいデザインのパーツ(ミラー、レバー、ステップなど)で世界的に有名です。フランスのERMAX(アルマックス)は、多彩なデザインのスクリーンやカウルを手掛けています。これらのブランドパーツをバランス良く取り入れることで、国産パーツだけでは出せない独特の雰囲気を演出することが可能です。
海外製パーツを賢く購入するためのヒント
海外製品の購入には、国内に正規代理店が存在するブランドを選ぶのが最も安全で確実です。代理店を通せば、製品に関する質問や万が一のトラブル時にも日本語で対応してもらえます。もし海外の通販サイトから直接購入する場合は、信頼できる大手サイトを利用し、購入者のレビューをよく確認することが重要です。また、高額な商品には関税がかかる場合があることも念頭に置いておきましょう。
おすすめのマフラーブランドと特徴

バイクカスタムの頂点に立ち、ライダーの五感を最も刺激するパーツ、それがマフラー交換です。CB650Rが持つ直列4気筒エンジンのポテンシャルを解放し、サウンド、パフォーマンス、そしてルックスを劇的に変化させるマフラーは、カフェレーサーカスタムを完成させるための最後の、そして最も重要なピースと言えるでしょう。ここでは、後悔しないマフラー選びの基本から、絶対的な人気を誇るトップブランドまでを徹底的に紹介します。
車検対応のマフラーを選ぶ重要性
心昂るサウンドとルックスを求めてマフラーを交換する上で、絶対に避けては通れないのが「車検」と法律の問題です。近年、オートバイの騒音規制や排出ガス規制は年々厳格化しており、規制に適合しないマフラーを装着して公道を走行した場合、国土交通省が定める不正改造とみなされ、厳しい罰則の対象となります。
具体的には、整備命令が発令され、それに従わない場合は車両の使用停止命令や50万円以下の罰金が科される可能性があります。そうしたリスクを避け、永く安心してカスタムを楽しむためには、「JMCA(全国二輪車用品連合会)」が認定した政府認証マフラーを選ぶのが最も確実な方法です。
JMCA認定マフラーは、国が定める厳しい騒音・排出ガスの基準値をクリアしていることを第三者機関が証明した製品であり、その証としてマフラー本体に認証プレートがリベットで取り付けられています。このプレートがあれば、堂々と車検を受けることができるのです。
【最重要】年式による排ガス規制の違いを必ず確認!
前述の通り、CB650Rは年式によって準拠すべき排出ガス規制の基準が異なります。マフラーが騒音基準をクリアしていても、自分のバイクの型式に対応した排ガス試験をクリアしていなければ車検には絶対に通りません。
販売年 | 型式 | 適用される主な規制 | 選ぶべきマフラー |
---|---|---|---|
2019~2022年 | 2BL-RH03 | 平成28年排出ガス規制 | 2BL-RH03適合品 |
2023年~ | 8BL-RH03 / 8BL-RH17 | 令和2年排出ガス規制 | 8BL-RH03 / RH17適合品 |
特に、2023年以降の8BL型式はより厳しい令和2年規制に対応している必要があります。マフラーを購入する際は、必ず製品の適合情報に自分のバイクの型式が含まれているかを販売店のスタッフに確認するか、メーカーサイトで入念にチェックしてください。
CB650Rにマフラーのスリップオンはある?

費用を抑えつつ、サウンドと見た目の変化を楽しめる「スリップオンマフラー」を探している方もいるかもしれません。しかし、非常に残念ながら、結論から言うと、CB650R専用として販売されているスリップオンマフラーはほぼ存在しません。
その理由は、CB650Rの純正マフラーの構造にあります。4本の美しいエキゾーストパイプは、エンジン下部にある大きな触媒ボックス(弁当箱とも呼ばれる)に集合し、そこから短いサイレンサー(消音器)へと繋がる一体構造に近い形をしています。そのため、末端のサイレンサー部分だけを交換するスリップオンタイプを物理的に装着することが極めて難しいのです。
このため、CB650Rのマフラー交換は、エンジン直後からのエキゾーストパイプごとすべて交換する「フルエキゾースト(フルエキ)」が基本となります。価格は15万円~30万円程度と高価になり、取り付け作業の難易度も上がりますが、それに見合うだけの大きなメリットがあります。
フルエキゾーストマフラーの主なメリット
- 大幅な軽量化: 純正マフラー(約8.5kg~11kg)に対し、チタン製フルエキなら3kg台になることも。運動性能が劇的に向上します。
- 性能向上: 排気効率が最適化され、エンジンレスポンスの向上やパワーアップが期待できます。
- 美しいデザイン: 職人が手作業で曲げたチタンエキパイの美しい焼け色は、まさに機能美の極致です。
ヨシムラのサウンドと性能
ヨシムラは、数々のレースシーンで伝説を築き上げてきた、日本が世界に誇るトップブランドです。”POP吉村”の愛称で知られる創業者・吉村秀雄氏から受け継がれる「高性能・高品質」への飽くなき探求心は、今もすべての製品に宿っています。CB650R用にも、その技術の粋を集めたフルエキゾーストマフラーがラインナップされています。
ヨシムラマフラーの最大の魅力は、やはりそのパフォーマンスの向上です。長年のレース活動で培われたデータに基づき設計されたマフラーは、ノーマルと比較してパワーは最大5.9%、トルクは最大5.2%向上し、重量も約4kgの軽量化を実現すると公表されています。これにより、特に中~高回転域での吹け上がりが鋭くなり、胸のすくような加速フィールを体感できるでしょう。
そして、もう一つの魅力が官能的な「ヨシムラサウンド」です。アイドリングでは4気筒らしい重厚な低音を響かせ、ひとたびアクセルを開ければ、高周波の倍音を含んだ突き抜けるようなレーシングサウンドへと変化します。決して耳障りな爆音ではなく、計算され尽くした音質は、乗る者の心を高ぶらせ、走る喜びを何倍にも増幅させてくれます。

アールズギアのチタン製モデル
アールズ・ギアは、元GPライダーである樋渡 治氏が代表を務めるブランドで、特にチタンという素材の扱いに長けています。「あくまで乗りやすく、どこまでも気持ちよく」をコンセプトに、ライダーが本当に楽しめるマフラー作りで、多くのベテランライダーから絶大な信頼を得ています。
アールズ・ギアの「GPスペック」シリーズは、その名の通りレーススペックの品質を誇り、フルチタン製による圧倒的な軽量化が最大の特徴です。
ノーマルの8.5kg(RH03型)に対してわずか3.7kgと、5kg近い軽量化を達成します。この差はバイクに跨って引き起こした瞬間から体感でき、走り出せば切り返しやコーナリングで、まるで車格が一つ下のバイクを操っているかのような驚くほどの軽快感をもたらします。
性能面では、ピークパワーの追求よりも、常用域である低中回転域のトルクの谷を徹底的に解消し、どこからでもスムーズに力強く加速するフラットなトルク特性を重視しています。
これにより、街乗りからツーリングまで、あらゆるシーンでストレスのない上質な走りを提供します。サウンドは、迫力ある重低音でありながらも品があり、長距離を走っても疲れない「大人のスポーツサウンド」と評価されています。職人技によるチタン特有の美しい焼き色(チタンドラッグブルー)も、所有する喜びを深く満たしてくれるでしょう。

珍しいマフラーの2本出しカスタム

究極の個性を追求する中で、左右対称の迫力あるリアビューを持つ「マフラーの2本出しカスタム」に憧れを抱く方もいるかもしれません。しかし、CB650Rの直列4気筒エンジンは、排気効率を考えると4本のエキパイを集合させて1本のサイレンサーで処理する「4-2-1」または「4-1」レイアウトが最も合理的です。そのため、市販されている社外マフラーは、基本的に右側1本出しのショートタイプが主流となっています。
結論として、CB650Rのマフラー2本出しは、専門のカスタムショップによる完全なワンオフ(特注)製作でのみ実現可能な、極めて難易度の高いカスタムです。
ワンオフ2本出しマフラー製作の現実
唯一無二のスタイルは魅力的ですが、非常に高いハードルが存在します。
- 高額な費用: 設計から製作、セッティングまで含めると、費用は数十万円から、場合によってはそれ以上になる可能性があります。
- 性能面のリスク: 左右の排気バランスを均等にするのが非常に難しく、下手をするとトルクの谷が発生したり、ノーマル以下の性能になったりするリスクが伴います。
- 重量の増加: パーツ点数が増えるため、大幅な重量増は避けられません。運動性能への影響も考慮する必要があります。
高い技術力と深い知識を持つ信頼できるショップと、入念な打ち合わせを重ねることが成功の絶対条件となります。
高いハードルはありますが、すべての困難を乗り越えて完成した暁には、世界に一台だけの究極のスタイルを手に入れることができるでしょう。
よくある質問:CB650Rカフェレーサーカスタム
ここでは、CB650Rのカフェレーサーカスタムを検討している多くの方が抱く、具体的な疑問についてQ&A形式でお答えします。
Q・CB650Rをカフェレーサーにするためのカスタム総額はどれくらいですか?
A・カスタムの範囲や選ぶパーツのブランドによって大きく変動しますが、一つの目安として、スタイルを大きく変えるための主要パーツを揃える場合、一般的に25万円~50万円程度を見ておくと良いでしょう。
費用の内訳(目安)
フルエキゾーストマフラー: 150,000円 ~ 300,000円
バックステップ: 50,000円 ~ 80,000円
ビキニカウル/メーターバイザー: 20,000円 ~ 40,000円
セパレートハンドル: 30,000円 ~ 60,000円
これに加えて、塗装費用やバイクショップに依頼する場合の取り付け工賃が
Q・バイクのカスタム初心者でも自分でできますか?
A・アンダーカウルやミラー、レバー交換など、比較的簡単なボルトオンパーツであれば、工具さえあれば初心者の方でも十分に挑戦可能です。しかし、以下のパーツの交換は専門的な知識と技術、特殊な工具が必要になるため、安全を最優先し、信頼できるバイクショップに依頼することを強く推奨します。
【特にプロへの依頼を推奨する作業】
フルエキゾーストマフラーの交換(排気漏れのリスク)、ハンドル周りの交換(配線や操作系の重要部分)、そしてブレーキ関連のパーツ交換は、一歩間違えると重大な事故につながる可能性があります。
Q・カフェレーサーカスタムで乗り心地は悪化しますか?
A・はい、「快適性」という点ではノーマルよりも低下する傾向にあります。セパレートハンドルやバックステップによって前傾姿勢が強くなるため、特に長距離のツーリングや市街地での低速走行では、手首や腰への負担が大きくなります。
しかし、それは「悪化」というよりも「乗り味の変化」と捉えるのが適切です。スポーティーな走行シーンでは、バイクとの一体感が格段に増し、よりダイレクトにマシンを操る楽しさを感じられるようになります。快適性と引き換えに、刺激的な操縦性能を手に入れるカスタムと言えるでしょう。
Q・カスタムすると売却時の査定額は下がりますか?
A・残念ながら、一般的には査定額は下がる傾向にあります。なぜなら、カスタムされたバイクは買い手の好みが限定されてしまい、ノーマル状態のバイクよりも買い手が付きにくくなるためです。
ただし、ヨシムラやアールズギアといった有名ブランドの高価なパーツが綺麗に装着されている場合は、プラス査定になることも稀にあります。最も高額査定を狙うのであれば、取り外した純正パーツをすべて綺麗に保管しておき、売却時にノーマル状態に戻す(純正戻し)のが最善の方法です。
カスタムを始める際は、後々のことも考えて、取り外した純正パーツをなくさないように大切に保管しておくことをおすすめします。
理想のCB650R カフェレーサーを目指そう
この記事では、CB650Rを理想のカフェレーサースタイルにカスタムするための、文化的背景から具体的なパーツ選び、そして最も重要なマフラー交換に至るまで、多岐にわたる情報をお届けしました。最後に、あなたが後悔しないカスタムを進めるための最も重要なポイントを改めてまとめます。
- CB650Rはホンダが創り上げたネオスポーツカフェという素性の良さからカスタムベースに最適
- カスタムの第一歩はスタイルを決定づけるカウルやハンドルなど比較的着手しやすいパーツからがおすすめ
- マフラー交換は性能も音も激変するカスタムの華だがCB650Rはフルエキゾーストが前提となる
- パーツ選びで最も重要なのは自分のバイクの年式と型式に適合し車検規制をクリアしているかの確認
カスタムは、決して安い買い物ではありません。しかし、情報を集め、悩み、選び抜いたパーツを自分の手で取り付け、少しずつ愛車が理想の形に変わっていく過程は、何物にも代えがたい大きな喜びと満足感を与えてくれます。
それは、バイクとの対話にも似た、オーナーだけが味わえる特別な時間です。まずはこの記事を参考に、SNSやバイク雑誌で他のオーナーの素晴らしいカスタムを眺めながら、自分の理想のイメージを膨らませてみてはいかがでしょうか。
あなただけの一台を創り上げる、エキサイティングな第一歩を、ぜひ今日から踏み出してください。